■≪インソムニア≫★★★★ 02.09.27 (ネタバレあり)
あまり役者で映画を見るということはないのですが、アル・パチーノはそういう数少ない役者の一人ですね。
この人の場合、「颯爽」と「ヨレヨレ」が同居していて、ちょっと破滅的なキャラをやらせると彼ならではの味があるので好きです。
ちょっと古くなるけど≪スカーフェイス≫なんてよかったですね。押しは強いのだけど押し切れずに悲劇に向かっていくという悲劇への突入角度の持ちようは脚本や演出の力ではなくてアル・パチーノの演技のものですね。
今回もそのハマリのキャラでアル・パチーノ節が堪能できます。
ベテラン刑事役なんですが、善意からの証拠のでっち上げがばれて、監査の対象となっていることから、事件はどんどん悪い方向に転がって抜き差しならぬ状態に陥ります。
事件解決のために派遣された先が、アラスカという白夜の世界ということもあって不眠症になり颯爽ぶりはどんどんヨレヨレ化していく。
アラスカが舞台というのがなかなかいいアイデアで、パソコンの壁紙にしたいような風景があたりまえのように広がっている。
たいがいの人が思うことでしょうが、アル・パチーノも老けた。もうほとんど老人ですね。
しわがれ声がますますしわがれてしまった。
これだとなかなか「颯爽」と「ヨレヨレ」の落差が生まれない。これがちょっと苦しい。
ロビン・ウィリアムズとうまい役者を立てて人間ドラマとしてスリリングなんだけど、終わってしまうとたいした事件ではない。三人の中でドラマは完結してしまう。小品の味わいと言えばそうなんだけど、ちょっとはぐらかされた感じが残る。
終わり方をもう少し大きくできたのではないかと思うのだけど、もうヨレヨレたえだえだったからあれ以上のドラマはできなかったのかもしれない。
最後「道を見失うな」という最後の台詞はそれなりに沁みましたね。ちょっとドキッとしました。
善意からの道の逸脱だったのですが、一度逸脱するともう元の道には戻れない。
世界は道を見失っていないのか。日本はどうか。政治はどうか。そして私どうかとちょっと考えてしまいました。
シンプルだけど心に届きました。出来の凸凹はありましたが、メッセージがきちんと届いた点でいつまでも記憶に残る映画になったのでした。