《007カジノロワイヤル》★★★★2006-12-02
[ネタバレあり]

これまで荒唐無稽の代名詞で、ちょっとしゃれたユーモアを感じさせるとこがアイデンティティの007が、一変した。これほどクールでハードな凄みのある主人公は少ないのではと思わせる180度の転換となった。

タイトルバックは女性のヌードをコラージュしたものと決まっていたのが今回は男っぽいもの。意気込みが感じられます。

アクション映画というのはヒーローが戦う姿をしめすことで、観客はそのヒーローに自分の生き方を重ね、励まされたりするとこがある。

劇中で、「(任務にもどって)鎧を着てしまう」とか「君が鎧を脱がした」といった台詞があるが、ハードボイルドを意識した会話になっている。

すでに≪クラッシュ≫で、善悪とはっきり区別できないという話を書いているポール・ハギス(《クラッシュ》《ミリオンダラー・ベイビー》《父親たちの星条旗》を書いてるのだからすごい)は強いけど人間味あふれ失敗やひどい目にあうヒーロー像をつくっている。ただそれが完全に成功したのかどうかはやや疑問だ。

見終わった後にそれがやさしさとタフさを併せ持つヒーローとして像を結ばない。碧眼の殺人マシンのようなクールさは描かれているのだけど、生身の人間を強調した部分とアンマッチのままだったように思う。

ドラマとしても、恋人が死んでから復讐話になるのだろうから、あそこからもう一山あるだろうと思ったらあっさりエンディングになったのががっかりだった。

以前、ジョージ・レイゼンビーの《女王陛下の007》では007は結婚までしているので、恋人を亡くすというのは、二番煎じでもある。

まして、ラストは敵一人を相手にマシンガンを構えてというのはどうだろう。あそこは、ワルサーPPKだろう。

それまで比較的ラフな格好だった007が、最後名乗りをあげるときは正装して007らしい格好になる。これが彼の鎧なんだろう。生身の気持ちは封印してプロの諜報員に徹するジャジャジャーンとエンディングテーマ曲が流れるという一番大事なシーンなのに残念。 

劇中に、007のテーマが一度も使われなかったのは残念なとこだったが、それはまだ007は誕生していないのだからしょうがないのかな。

アクションとしては追っかけばっかですね。追っかけはかなりしつこいのですがちょっとワンパターン。昔はどんな話でも、要塞基地に侵入して大量破壊をしていたことを思うと、非常に質素ですね。まぁマンネリ化していたとも言えるのでこれはこれでいいんでしょう。ただ大型のアクションの根拠が薄れるのちょっと苦しい。最初の小物の爆弾男を追っかけるのに、あれだけの破壊はないでしょう。

ピアース・ブロスナンの007がなかなかよかったので、今回の変更はやや残念だけど、かなりヒットしてるようだし、こうやって007がマンネリから脱するというのはいいことなんだと思う。次に期待したいですね。